赤ちゃんは生まれた途端に泣きます。

せいぜい縁日の綿あめくらいの大きさ、

弱々しいヒフというフクロに包まれた生命。

「いまの私にとって、こりゃ、まわりのもんすべてガイテキだぞ」とか

「生まれたということは、死に向かうはじまりでもあるんだぞ」と

本能的に感じて、SOSを発進するのです。

だから、泣きます。これはとても明快です。

では、ここでもんだい。生まれたばかりの赤ちゃんは、

なぜ口の端をニッと上げてほほえむのでしょう。

一般的には、生後一ヶ月くらいたつと

母親の笑いかけ(つまり外部からの刺激)に

応えることができるようになると言われています。


しかし、それ以前、生まれたての赤ちゃんを観察していても、

まるで思い出し笑いでもするように、一人静かに微笑むことがあります。


目に見える何の刺激もなく、

まだ頭の中を駆けめぐる過去の記憶もないはずなのに。

これは、いまだ謎です。わかっていません。

医学的には「自発的微笑」とか「対象なき微笑」と

言われていますが、それ以上は説明できないのです。

そもそも、泣くことに比べて、笑うという行為には、

理由を見つけにくい。なんとも不安定なこの世界に

生まれてしまった生命の発する「笑い」とは、

科学を超越しているのかもしれません。

あなたはどうして笑ったのですか。

憶えていますか。