実習で、埼玉の病院に行った。

車椅子での生活を続けていたおばあちゃんは、

失語症でしゃべることもできなかった。

3ヶ月間、付き添い、共に過ごした。

結局、実習期間のうちに言葉を交わすことはできなかった。

私は本当に力になれたのか。もっとできることがあったんじゃないか。

そう思うと、悔しかった。

実習最後の日に「今日で、私が、この病院にいるのは最後です」と

ゆっくりと話した。部屋をあとにしようとした時だった。

おばあちゃんが車椅子で近づいてきて、手を握ってくれた。

強くはなくても、あたたかい手だった。

言葉はなくても、「ずっといてほしい。がんばるから。」と

その手は言っていた。涙が出た。私のほうが励まされてしまった。

帰り支度をしている時に、病院の先生から

「おばあちゃん、まだ、言葉は帰ってこないけれど、

笑顔が返ってきたよ」と言われてうれしかった。

作業療法士は手先の作業を通じて、人の機能回復をはかる。

スプーンを持つ、絵を描く、衣服のボタンをかける。

それは毎日の小さな積み重ねによって、少しずつ回復をはかっていく、

根気のいる仕事だ。生活の中には、なんと作業が多いことだろう、と

高齢者や障害者と接することで気がついた。


沖縄の施設に実習に行った時には、精神科の患者の方々とヨットに乗り、

一日釣りをしてすごした。ふだんの作業訓練を離れて、

心を開いて接することができた。

心を開いて向かい合わないと、

作業訓練もうまく運ばない、ということも知った。

ここでの4年間は、高校の3年間よりも早かった気がする。